海外医療の現場から

アジアの高齢化問題に日本の知見をーアジア健康構想に関する調査よりー①

2019.09.17

海外事業部
マネージャー 鈴木勝也

メディヴァでは2016、2017年度に引き続き、内閣官房より「『アジア健康構想』実現に向けたヘルスケア産業のアジア国際展開等に関する調査」を受託し実施しました。そこで、これから4回に分けて調査の結果をご紹介させて頂きます。第1回は、調査の背景と概要についてご紹介します。

調査の背景

「アジア健康構想(Asia Health and Wellbeing Initiative)」では、高齢化問題に対してアジア地域全体で取り組むことで、社会的・経済的に活力ある社会の実現を目指すという方針のもと、アジア地域における相互互恵的な関係づくりを進めています。

具体的には、予防・リハビリテーション・自立支援などの高齢者施策の知見・経験をアジアの実情とニーズに見合う形で紹介し、新しいアジアに相応しいUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ )モデルの確立を目指すこと、また民間事業者のアジア地域への展開を支援するとともに、介護人材への日本語教育の基盤整備、送出国との連携強化等を推進することにより、アジアにおける高度な介護人材の育成および還流を推進することとされています。

実際にこのような方針に基づき、日本政府はベトナムやフィリピン、インド等の各国とヘルスケア分野でのMOCを相次いで締結しています。

これまでは、医療・介護分野の製品やサービスを前提にしていましたが、昨年度からは裾野が広がり、予防や健康維持に資するヘルスケアサービスや健康な生活を支えるサービスについて、自律的な産業を振興し、それを実現する人材や社会基盤、産業基盤まで裾野の広いヘルスケアをアジアで実現することを目指しています。

図表・1アジア健康構想において目指す裾野の広い富士山型のヘルスケア

出所)内閣官房 健康・医療戦略室

 

調査のテーマは3つ

このような背景の中で、本調査は、アジア地域の介護人材をいかに効果的・効率的に受入れ、彼らが日本の介護に関する知見を習得し、自国にて高齢者向けサービスや体制を整備するかという、人材還流と日本のヘルスケア事業者の海外展開に向けた具体的な課題の整理や、解決の方向性を明らかにすることを目的としています。

調査のテーマは大きく分けて、次の3つです。

(1)アジアに紹介すべき日本的介護の整理

(2)人材環流・教育関連の整理

(3)ヘルスケア分野での国際展開における事業者の課題整理

以下で(1)~(3)の概要を、次回以降の記事では、それぞれについて踏み込んで紹介します。

(1)アジアに紹介すべき日本的介護の整理

日本の介護を発信するために、まずは日本の介護の優れているところを定義し、その要素を明らかにすることから始めています。

本調査においては、日本の介護の特徴は「地域包括ケア」であり、その中で実践されている「自立支援に資する介護」だと定義した上で、海外において地域包括ケアを組成するために、日本の好事例においてどのような背景や流れで確立されていったのかを調査しています。

また、自立支援に資する介護においても、どのような要素や取り組みが自立に繋がるかという事についての調査が始まっており、それらをご紹介します。

(2)人材環流・教育関連の整理

昨年度から実際に海外からの介護分野の技能実習生の受け入れが始まっています。すでに受け入れられた事業者がどのような取り組みで、介護人材の受け入れや教育を行っているか、実際の事業者の声を聞きながら、うまくいった点、反省点なども踏まえながら整理を行いました。

(3)ヘルスケア分野での国際展開における事業者の課題整理

すでに日本からアジアの各国でヘルスケア事業者の海外進出が進んでいます。ただ、すべての事業者が成功している訳ではなく、海外展開における課題やその解決に向けた方策などを調査しています。

今回の調査対象国は中国、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスの5カ国でした。すでに高齢化問題が顕在化してきている国と、そうではない国と状況はそれぞれで、各国の特徴やヘルスケアサービスの状況についてご紹介します。

 

ご興味ある分野がありましたら、またご覧頂ければと思います。

 


執筆者:鈴木 勝也│Katsuya SUZUKI

株式会社メディヴァ コンサルタント。コンサルティング事業部マネジャー。愛知県出身。名古屋大学大学院医学系研究科修了。理学療法士。ヘルスケア業界におけるサービス提供者と受け手の満足を両立し、誰もが質の高い医療・介護を受けることができる環境の実現を目指し、メディヴァに参画。医療機関や介護施設の運営支援、企業・行政に対するコンサルティングに従事。現在はメディヴァ子会社を通じた介護事業の設立・運営を行うとともに、アジアの高齢化問題に対する政策への関与や現地の事業者支援に取り組む。