建築プロジェクトの進め方(施主側の建築施工管理)

2019.09.02

コンサルティング事業部 正者忠範

 ここ数年、病院建物の老朽化、移転、増床に伴う新棟建築、既存棟建替などの相談が増えております。新しく建物を作る場合、少なくとも「億単位」の費用がかかってくるため、しっかりと計画していくことが重要です。先日発表になったWAM建築費レポートによれば、平成30年度の医療施設建設費は、㎡単価365千円(前年比プラス19千円)、定員1人当たりの建設費19,717千円(前年比プラス1,633千円)と、まだまだ上昇しております。今回、とある医療機関の既存棟改修に携わったため、現場(施主側)での「建築施工管理」について、注意すべき点を「施工前」「施工中」「施工後」のフェーズに分けてご紹介致します。

○そもそも施主側の建築施工管理とは?
 新しく建物を建てる(改修する)場合、全体施工管理は建築事務所、設計図を書くのは建築士(全体施工管理を担う場合もあり)、工事を施工するのは建設会社(下請会社含む)がそれぞれの役割を分担してプロジェクトを進めていきますが、当然、施主側の意見を元に進めて参ります。全体施工管理とは別に、施主側(今回は医療機関)の意見を取り纏める「建築施工管理者」も必要な役割と考えております。ある程度、医療機関内の設備等にも精通しており、決定権のある人が望ましいと考えます。全体工程の把握、予算管理、行政をはじめとした関係各所との折衝など業務は多岐に渡ります。

【施工前】
 「どんな医療機関にするか」という基本構想を受け、建築士が図面に落とします。設計事務所や建築業者の選定を経て、実施図面の完成です。(このあたりについては、次回とし、今回は省略させて頂きます)図面が出来てから、施主側の建築施工管理者(以下、管理者)が動き出します。院内に会議体を設置しその進行を担います。会議はいくつかあります。代表例は以下の表に記載しています。
まずは、部署別に図面案を見ていただき、動線/什器の配置等に関する意見を取り纏めます。その案を院内会議に上程し、仕様等を決定していきます。最終決定したものを定例会議にて「施主側の意見」として提出します。定例会議では、施工側からの意見(当然反対意見も)も出ますので、現場との摺り合わせには、相当な時間を要します。ロスタイムを防ぐためにも余裕を持っての会議としたいところです。また、早く決定するためにも、日頃からコミュニケーションを重視し、双方(管理者と現場、施工側と現場)の関係作りもプロジェクトを進める上で非常に重要です。

表:会議体例

【施工中】
 施工中は、想定外のトラブルが発生します。「削ってみたら、壁に防水対策がされていなかった!」「地中にゴミが埋められていた!」など、枚挙に暇がありません。トラブルは起こるもの、と考えておいた方がよさそうです。
 そこで、「どう対応するか」が管理者の腕の見せ所とも言えます。トラブルの多くは、避けて通れない(やらなければ先に進めない)ことがほとんどです。予算管理にも影響しますので、施工業者とも協力し、「費用がどのくらいかかるか」「全体工期にどう影響してくるか」を確認し、速やかに解決策を出し、院内のコンセンサスも取っておく、という必要があります。件の医療機関では、地中埋設物(水槽)が掘り出され、撤去するのに800万円近くかかってしまいましたが、その後、別な工事で行政等との交渉により、700万円減額することが出来、結果的に100万円の予算オーバーとなりました。目の前だけで考えるのではなく、全体を俯瞰して管理していくことも重要です。
 また、施工中に注意したいのは、「患者様やスタッフの動線にかかる作業」があるときの事前準備です。掲示物の作成はもちろんのこと、院内への周知方法について、改めて検討することも必要です。当然のことではありますが、安全が何事にも優先されます。場合によっては、シミュレーションをするなどして、対応しておきましょう。

【施工後】
 小改修でも大規模改修でも、竣工検査が終われば一安心です。
 とはいえ、管理は継続して行っていく必要があります。件の医療機関では、使い始めてから、「シンク下(木材)が腐食する」ということが起きました。これは、スタッフの使い方が悪かった訳ではなく、設計側も施工業者曰く、「想定以上の水量が使われた」ことに起因しておりました。実際に動いてみないとわからないことも多いため、通常は施工1年後に点検をして頂けますが、その前でも何かあれば補償(対応)してもらえるような契約を結んでおくことをおすすめ致します。

【まとめ】
現場目線で、建物施工管理についてまとめてみました。改修/新築は一大プロジェクトです。言わずもがなですが、設計士や建築作業所長(作業員)など、各担当者とは信頼関係が築けなければうまくいきません。予算や工期のことで言い争いになることもあるでしょう。ただ、同じ目標(竣工)に向かって力を合わせている仲間です。気の置けない仲になれれば、資材の値引きや次の仕事につながるかもしれません。お互いが気持ちよく仕事をするためにも、建築施工管理者は自院関係者と設計士/作業員の「つなぎ人」になれるとよいですね。うまくいけば、絆が深まり、より仕事が進めやすくなりそうです。
 管理者はそうそう経験できませんので、やりがいはあります。普段の業務にも活かせることができますので、機会があれば経験することをおすすめ致します。