医療機関M&Aにおけるデューデリジェンスについて

2019.08.15

コンサルタント 山田智輝 

医療機関に限らず、M&Aプロセスにおいて重要なポイントのひとつにデューデリジェンスがあげられます。デューデリジェンスについての理解の不足や、甘く考えていると、後々痛い目にみる可能性があります。本ブログではデューデリジェンスについての全体像を示しつつ、留意点についても言及していきます。

  • デューデリジェンスとは?
  • デューデリジェンスの種類とは?
  • デューデリジェンスを行うタイミングとは?
  • デューデリジェンスを行う範囲は?
  • デューデリジェンスを誰がやるのか?
  • デューデリジェンスの結果、リスクが発見された際はどうするのか?

 

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンスとは、対象先(本件ではM&Aにおける買収先)の価値やリスクの調査をすることをさします。時に「デューデリ」や「DD」と略されて呼ばれることもあります。M&Aにおいては売手から買手へ情報開示がなされ、それを基に買手が判断するのですが、売手から開示された限られた情報のみでは売手と買手の間に情報格差が生まれてしまいます。そのため、これまでやり取りしてきた情報の正確性と、まだ確認できていないリスクの確認をする手段としてデューデリジェンスが行われます。

デューデリジェンスの種類とは?

買手がM&Aを検討する際には、売手の対象の医療機関を様々な観点から総合的に判断する必要があります。その為、デューデリジェンスの内容も多岐にわたります。内容によっていくつか分類され、代表的なものとしては以下があります。(括弧内は主な調査内容)

・財務デューデリジェンス:(決算書の妥当性・実在性、会計処理の適正性等)
・税務デューデリジェンス:(税務申告書の妥当性・正確性、M&Aスキームにおける税務リスク調査等)
・事業デューデリジェンス:(事業環境の分析、事業計画の妥当性、施設基準の確認等)
・法務デューデリジェンス:(組織・ガバナンスの調査、法令順守、許認可の確認等)
・不動産デューデリジェンス:(不動産の状況、長期の修繕計画等)
・人事労務デューデリジェンス:(退職給付債務、残業代未払債務の確認、労使関係の調査等)

デューデリジェンスを行うタイミングは?

買手が譲渡案件の概要を把握し、およその譲渡金額、譲渡スキーム等、方向性が合意でき、基本合意書を締結した後に行うことが一般的です。無床のクリニックなど規模の小さい案件の場合は、デューデリジェンスの規模も限定的なため、基本合意書を締結しないケースもあります。その場合は、およその合意ができた段階でデューデリジェンスに進むことになります。

なお、基本合意書を締結するかしないかについてですが、売手、買手それぞれのメリット、デメリットがあります。基本合意書を締結するメリットとしては、優先交渉権を与えられることが多く、デューデリジェンスの途中で他の買手候補と商談を進められてしまうリスクを防ぐことができます。デューデリジェンスには時間とお金がかかるものです。基本合意書締結し独占交渉権を得ることで、安心してデューデリジェンスを進めることができますので、買手としては、基本合意書を締結するほうが望ましいと言えます。

一方、売手としては基本合意書を締結し、独占交渉権を与えることで、他の買手候補との交渉の機会損失を生むというデメリットがあります。ただし、複数の買手候補がいないケースでは、基本合意書を締結することで、ひとつの買手候補としっかり向き合うことにもなり、有益となることもあります。

デューデリジェンスを行う範囲は?

前項においてデューデリジェンスの種類を説明しましたが、デューデリジェンスを行う範囲は案件によってまったく異なります。

例えば、出資持分譲渡に代表される法人譲渡については、手続きが比較的簡易ではありますが、一方で負債や権利関係を全て引き継ぐことになり、潜在的な債務や偶発的な債務までを引き継いでしまう可能性があるため、デューデリジェンスの範囲が広がります。一方、事業のみを継承する事業譲渡を行う際は、リスクが限定的になりますので、デューデリジェンスの範囲を絞ることが可能です。

ただし、デューデリジェンスの費用を抑えることを目的にデューデリジェンスの範囲を必要以上に限定的にしてしまい、不十分な調査に終わってしまうと、その後節約した費用の何倍、何十倍もの大きな損失を被るリスクが出てくるケースもあります。リスクと予算、そしてスケジュールのバランスをとることが大切です。

デューデリジェンスを誰がやるのか?

大きくは2つあります。買手本人が行うケースと外部の専門家に依頼するケースです。

買手本人がやるメリットとしては、余計なフィーを支払わずに済むため、金銭的に節約することができます。一方デメリットとしては、専門性が高く、また限られた人員で行うことになるため、買手だけで全てのデューデリジェンスを行うことの難しさがあげられます。

外部の専門家に依頼する場合は、専門性の高い調査ができ、スケジュールのコントロールもしやすい反面、費用が掛かってしまいます。

外部の専門家に依頼する際の留意点としては、デューデリジェンスを行う範囲を限定したうえで、明確な目的をもって依頼することが大切です。曖昧に依頼し、外部に丸投げしてしまうことで、必要以上の範囲まで調査が広がり費用が膨れ上がってしまう可能性があります。案件により必要十分な範囲を見定めたうえで行うことが大事です。デューデリジェンスの範囲については、アドバイザーや仲介者に相談しつつ、買手自らで十分検討することが大切です。

デューデリジェンスの結果、リスクが発見された際はどうするのか?

デューデリジェンスを行った結果リスクが発見された場合、以下の3つの方向性を検討します。

① スキームの変更で解決できるか

医療機関M&Aのスキームは、出資持分譲渡+社員・役員の交代、事業譲渡、合併、分割の大きく4つあります。ここでは詳細は割愛しますが、それぞれのメリット・デメリットがあるため、スキームを変更することで問題を解決できる場合があります。

② 金銭で解決できるか

例えば退職金の積み立てが十分ではなく、簿外債務が見つかった場合です。その場合は、譲渡価格から退職金の引き当て不足の額を差し引く交渉を売手とすることで、解決を目指します。

③ 最終譲渡契約書の内容で解決できるか

最終譲渡契約書の中で、クロージングの前提条件として盛り込み、売手に解決(整理)いただくことで解決を目指します。逆を言えば、解決できなかった場合は、クロージングの前提条件を満たさなくなりますので、契約解除できるようにします。

上記①~③を検討してもなお解決できないような大きな問題やリスクが発見された場合は、M&A自体を断念する必要があります。それまでデューデリジェンスに時間もお金もかけているため、引きたくないという気持ちも理解できますが、その後のリスクを考慮して、今までのコストを切り捨ててでも「辞める」という決断をとることも時には重要です。

以上、デューデリジェンスについて説明してまいりました。M&Aのプロセスの中で重要なポイントのひとつですので、事前に全体感と留意点を理解していただければと思います。

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執筆者:山田智輝 Tomoki YAMADA
愛知県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。外資系の医療機器メーカー入職し、営業に従事。手術室に入る事も多く、医療現場の最前線を経験。医療の質を高め、日本の医療に貢献したいと思い、メディヴァに参画。現在はケアミックス病院を中心とした現場支援、再生計画策定、地域連携支援、M&Aアドバイザリー等に従事。