海外医療の現場から

サウジアラビア女性健康増進事業整備促進プロジェクト②

2019.08.19

コンサルタント 木内大介

 

サウジアラビアは若い国だが、今後高齢化が進む

サウジアラビアは若い人口の割合が多く、30歳未満人口が50%を超える一方で、高齢化はまだ進んでおらず65歳以上人口は約3%にしかすぎません(国連, 2015)。ただし、平均寿命は延びており、1960年代は40歳代であったのが、2014年時点では74歳まで延びています(国連, 2015)。2050年には65歳以上人口は15%に達する見込みであり、高齢者人口の増加が予測されています。これは将来的な医療費の増大を意味し、医療費削減は今後ますます大きな課題となることが予測されています。

 

 

 

 

女性の生活習慣病リスク要因は高く、予防は不十分

サウジアラビアの疾病構造は感染性疾患から非感染性疾患へ移行してきていいます。非感染性疾患には心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病やがんが含まれています。サウジアラビアでは、生活習慣病のリスク要因、特に女性は肥満度、高血糖、高血圧などが高いことが報告されています(国際保健機構, 2016; サウジアラビア保健省, 2017)。それに対して予防対策はまだ未整備であり、定期的に健診を受診する人の割合は日本の約5分の1しかありません。生活習慣病は早期に介入すると予防が可能な疾患であり、サウジアラビアでは特に女性を対象とした対策が必要になっています。

 

 

 

乳がんが多く、また進行した段階で見つかる割合が高い

サウジアラビアにおける女性のがんは罹患率、死亡率ともに乳がんが最も高くなっています。特に乳がんの罹患率は他のがんに比べて著しく高く、女性全体の罹患数の30%を占めています(国際保健機構 2013)。

 

 

また全体の傾向として罹患率に対する死亡率が先進国に比べ高いことが報告されています(国際保健機構, 2013)。これは、がんの診断を受けた場合、他の先進国に比べてそのがんで亡くなることが多いことを意味します。一つの要因としては、がんの診断が早期にできていない可能性が考えられます。サウジアラビアではまだ定期的な健康診断やがん検診の制度が整っておらず、早期発見が体系的に行われていないという現状があります。

 

 

 

さらに乳がんに関しては、サウジアラビアにおいては、診断時にすでにがんが進行している遠隔転移の段階である割合が高いことがわかっています。これは、国家レベルでの乳がん検診プログラムが確立されておらず検診プログラムへの物理的なアクセスが限られていたり、女性の乳がん予防や早期発見の意識が低いために受診に対する心理的障壁があったりし、そのため早期発見が遅れている可能性を示唆しています。

 

 

日本の国立がんセンターによると、乳がんは早期に発見した場合、「5年相対生存率」が高いことが報告されています。特に限局の段階で発見された場合は、99%近くに上ります。一方で、遠隔転移の段階で発見された場合、「5年相対生存率」は33%まで減少することもわかっています。つまり、がんの早期発見は予後に非常に大きな影響を与えることを示しています。この点において、サウジアラビアにおける乳がん検診を含む健診センターの設立は、乳がん早期発見の仕組みを広めることでサウジアラビア女性の健康に大きく貢献できると考えます。

 

 

次回は最終回になりますので、本プロジェクトの調査結果から考察される事業モデルと事業妥当性、また今後の事業の方向性について説明していきます。

 

 

 


投稿者:木内大介│Daisuke KIUCHI
株式会社メディヴァ コンサルタント。東京都出身。京都大学農学部農林生物学科卒業。英国ロバート・ゴードン大学大学院理学療法科修士課程修了。英国公認理学療法士として英国の国立医療機関 (NHS)を中心に、10年間働く。英国の病棟、外来、在宅、スポーツクラブなどの臨床現場を経験し、患者視点の医療、多職種連携、エビデンスに基づく医療の大切さを学ぶ。2014年6月に英国から帰国を機にメディヴァに参画。メディヴァ参画後、国内案件では在宅医療、外来、訪問看護の運営支援、看護小規模多機能の開設支援、海外案件ではアジア、中東地域における健診センター開設支援や各種調査事業に関わる。また英国スターリング大学と協同し、認知症にやさしいデザインの高齢者施設への導入支援にも関わっている。