2018年度(平成30年度)診療報酬改定を振り返る 在宅医療編(1)

2019.03.18

コンサルティング事業部 マネージャー
コンサルタント 荒木庸輔

中央社会保険医療協議会は2019年2月13日の総会で、消費税増税に伴う2019年度診療報酬改定を答申しました。今回の改定では2014年度改定の補填不足に対する調整も同時に行われ、2014年度改定で引き上げ率が低かった在宅患者訪問診療料は大幅に引き上げられました。2020年度改定に向けた議論の本格化を前に、2019年度改定を踏まえながら、全3回にわたり2018年度改定のポイントを振り返ります。

近年の在宅医療の診療報酬改定は、機能強化型の新設(2012年)、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算の新設(2014年)、在宅医療専門の医療機関の解禁(2016年)など、実績のある在宅療養支援診療所・病院(以下、在支診・在支病)への評価が続いたのに対して、2018年度診療報酬改定では、これまで評価の対象になることが少なった在支診・在支病以外の診療所や中小病院に向けて、重要な施策が講じられました。また、2016年度改定から導入された患者の状態に応じた評価も進められました。全体としては2018年度改定が在宅医療経営に与える影響は軽微で、多くの医療機関ではわずかにプラス改定となりました。

 

2018年度改定の3つのポイント

2018年度改定をふり返り、ポイントとして挙げられるのは次の3点です。

1 在宅医療ニーズの高度化、多様化への対応
2 在宅医療提供体制の裾野の拡大
3 患者の状態に応じたきめ細かな評価の推進

高齢者の多くは複数の疾患を有し、がんや認知症の対応など、在宅医療ニーズは多様化しています。一方、在宅医療提供体制の中心として期待された在支診の届出数は伸び悩み、近年横ばいから減少に転じました。

こうした背景を踏まえ、2018年度改定では、在宅医療の幅広いニーズへの対応力向上と、さらなる担い手の確保に向けて▽複数医療機関からの訪問診療の解禁▽在支診以外の診療所からの訪問診療に対する評価の充実▽200床未満の病院の参入強化――などの施策が講じられました。

また、在宅医療ニーズの多様化にあわせ、患者の状態に応じたきめ細かな評価も進み、一定の状態にある患者を対象とした包括的支援加算が新設されました。

『在宅医療編(1)』では、在宅医療の診療報酬のベースとなる「在宅患者訪問診療料」および「在宅時医学総合管理料(以下、在医総管)、施設入居時等医学総合管理料(以下、施設総管)」の改定内容を示しながら、上記1〜3のポイントを解説します。

1 在宅医療ニーズの高度化、多様化への対応:複数の医療機関からの訪問診療の解禁

2018年度改定では、在宅医療ニーズの多様化への対応として、複数の医療機関からの訪問診療が認められました。在医総管等の届出を行い、当該患者に対して療養計画を作成する主治医医療機関からの依頼を受けることを前提に、依頼を受けた医療機関は、原則として6ヶ月を限度(1に月1回、在宅患者訪問診療料を算定することが可能となりました。

これに伴い、在宅患者訪問診療料の体系も整理され、主治医医療機関は在宅患者訪問診療料(Ⅰ)1を、依頼を受けて訪問診療を行う医療機関は在宅患者訪問診療料(Ⅰ)2を、また、いずれの場合であっても、医療機関に併設する施設居住者に対して訪問診療を行う場合は、在宅患者訪問診療料(Ⅱ)を、それぞれ算定することとされました【図表1】。

これにより、これまでは往診料で算定せざるを得なかった褥瘡の管理等による、別医療機関からのコンサルトについても在宅患者訪問診療料が算定できるようになったほか、同一診療科を標榜する医療機関の間でも依頼が認められたことで、グループ診療体制における併診などへの活用も期待されます。

一方、課題としては、月1回を超える訪問診療は、これまでどおり往診料で算定せざるを得ない点や、依頼を受けて訪問診療を行った医療機関は在宅ターミナルケア加算や看取り加算等の加算を算定できないなど、人生の最終段階にある患者における連携には活用しにくい点が挙げられます。

なお、2019年度改定においては、在宅医療は在宅患者訪問診療料に対して消費税増税分の補填が行われ、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)1同一建物以外が約6.6%増の833点→888点へ、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)1同一建物が約4.9%増の203点→213点へそれぞれ大幅に引き上げられました。

 

【図表1】 在宅患者訪問診療料

※カッコ内の点数は2019年10月以降に適応 出典:厚生労働省告示第34号(2018年3月5日)および中央社会保険医療協議会総会示第408回(2019年2月13日)資料をもとに株式会社メディヴァが作成

1)特掲診療料の施設基準等別表第7に規定する別に厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がII度又はIII度のものに限る))、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群) 、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頚髄損傷、人工呼吸器を使用している状態)の患者はこの限りではない。また、当該他の保険医療機関の求めに応じ、同一の患者について、さらに以下に該当する診療の求めが新たにあった場合には、当該求めがあった日を含む月から6月さらに算定できる。
① その診療科の医師でなければ困難な診療

② 既に診療した傷病やその関連疾患とは明らかに異なる傷病に対する診療

2 在宅医療提供体制の裾野の拡大:在支診以外の診療所の訪問診療に対する評価の充実

2018年度改定では在宅医療の裾野の拡大のために▽在支診以外の診療所の訪問診療に対する評価の充実▽200床未満の病院の参入強化――が図られました。中小病院の参入強化については次回以降で詳しく取り上げますが、在支診以外の診療所に対しては、月1回の訪問診療を行った場合の在医総管、施設総管が50点プラスとなったほか、かかりつけ医としての継続的な診療に対する評価として継続診療加算(216点)が新設されました【図表2】【図表3】。

具体的には、ほかの連携医療機関や医師会等と協働して24時間往診体制を確保する等の要件(2を満たしたうえで、外来を4回以上受診したあと在宅医療に移行した患者に対して訪問診療を行った場合、在医総管・施設総管の所定点数に加えて継続診療加算を算定できるというものです。

これは主治医との継続的な関係を望む患者と、24時間対応の負担を軽減したい医師、双方にとってメリットがあり、かかりつけ医としての継続的な診療に対する評価が進んだという点においても大きな価値があります。

しかし一方で、結局は24時間往診体制を確保しなければならず、バックアップを担う医療機関に対するインセンティブも見送られました。また、残念ながら連携医療機関が往診した場合の診療報酬の取扱いなども明確に示されていません。

実際の運用にあたっては地域医師会をはじめ、在宅医療専門の医療機関や在宅療養支援病院等がかなり積極的に、連携の枠組みづくりに関わることが求められますが、算定は極めて困難であり、次回以降の改定において主治医の代わりにバックアップを担う連携医療機関への診療報酬や、連携におけるガイドラインなどが示されることが期待されます。

【図表2】在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料(改定後)
出典:厚生労働省告示第34号(2018年3月5日)をもとに株式会社メディヴァが作成。在宅緩和ケア充実診療所・病院加算および在宅療養実績加算は点数に含む。

【図表3】 継続診療加算の対象範囲
出典:厚生労働省告示第34号(2018年3月5日)をもとに株式会社メディヴァが作成。在宅緩和ケア充実診療所・病院加算および在宅療養実績加算は点数に含む。

 2)以下の全ての要件を満たし訪問診療を実施した場合に算定する。なお、継続診療加算を算定して訪問診療及び医学管理を行う月のみ以下の体制を確保すればよく、地域医師会等の協力を得て①又いは②に規定する体制を確保することでも差し支えない。

① 当該医療機関単独又は連携する他の医療機関の協力により、24時間の往診体制及び24時間の連絡体制を有していること。
② 訪問看護が必要な患者に対し、当該保険医療機関、連携する他の医療機関又は連携する訪問看護ステーションが訪問看護を提供する体制を確保していること。
③ 当該医療機関又は連携する医療機関の連絡担当者の氏名、診療時間内及び診療時間外の連絡先電話番号等、緊急時の注意事項等並びに往診担当医の氏名等について、患者又は患者の家族に文書により提供し、説明していること。

 

3 患者の状態によるきめ細かな評価の推進:包括的支援加算の新設

2016年度改定からの流れを引き継ぎ、2018年度改定では患者の重症度に応じた評価も進められました。

まず重症者として別に定める状態(3以外の患者に対して月2回以上の訪問診療を行った場合の在医総管、施設総管が、一律100点マイナスとなりました。一方で、同じ別に定める状態以外の患者の中でも、特に通院が困難であると考えられる要介護2以上、認知症日常生活自立度Ⅱb以上の患者等(4については、訪問回数にかかわらず新設された包括的支援加算(150点)の対象とされました【図表3】【図表4】。

これにより、訪問診療が月1回の場合は包括的支援加算によって150点プラスに、月2回以上の場合でも、在医総管、施設総管の減額分を包括的支援加算が補うかたちで50点プラスとなります。この結果、包括的支援加算の対象とならない軽症者の割合が高い医療機関は減収になる可能性がありますが、包括的支援加算の算定要件が要介護2以上など比較的広い範囲に落ち着いたことから、多くの医療機関では増収になると考えられます。

包括的支援加算の新設により、在宅医療を受ける患者はその状態によって①別に定める状態の患者(特掲診療料の施設基準等別表第8の2)、②包括的支援加算の対象となる患者(特掲診療料の施設基準等別表第8の3)、③その他――の3つのカテゴリーに分けられました。次回以降の改定においても患者の状態に応じた評価(重症者に手厚く、軽症者に薄く)の流れは続くと考えられ、各カテゴリーの対象の厳格化や評価の見直しがどのように進むのかが注目されます。

【図表4】 包括的支援加算の対象範囲

出典:厚生労働省告示第34号(2018年3月5日)をもとに弊社が作成。在宅緩和ケア充実診療所・病院加算および在宅療養実績加算は点数に含む。

3)特掲診療料の施設基準等別表第8の2に規定する別に厚生労働大臣が定める状態

①以下の疾病等に罹患している状態
末期の悪性腫瘍、スモン、難病の患者に対する医療等に関する法律に規定する指定難病、後天性免疫不全症候群、脊椎損傷、真皮を超える褥瘡

②以下の処置等を実施している状態
人工呼吸器の使用、気管切開の管理、気管カニューレの使用、ドレーンチューブまたは留置カテーテルの使用、人工肛門・人工膀胱の管理、在宅自己腹膜灌流、在宅血液透析、酸素療法、在宅中心静脈栄養法、在宅成分栄養経管栄養法、在宅自己導尿の実施、植え込み型脳・脊髄電気刺激装置による疼痛管理、携帯型精密輸液ポンプによるプロスタグランジンl2製剤の投与

4)特掲診療料の施設基準等別表第8の3に規定する別に厚生労働大臣が定める状態の患者

①要介護2以上の状態又障害支援区分2以上と認定されている状態
②認知症高齢者の日常生活自立度がランクⅡb以上と診断される状態
③週1回以上訪問看護を受けている状態
④訪問診療又は訪問看護において、注射又は喀痰吸引、鼻腔栄養の処置を受けている状態
⑤特定施設、認知症対応型共同生活介護事業所、特別養護老人ホーム、障害者支援施設等、看護職員が配置された施設に入居又は入所し、医師の指示を受けた看護職員から、注射または喀痰吸引、鼻腔栄養の処置を受けている状態
⑥その他関係機関との調整等のために訪問診療を行う医師による特別な医学管理を必要とする次の状態
(イ) 脳性麻痺、先天性心疾患、ネフローゼ症候群、ダウン症等の染色体異常、川崎病で冠動脈瘤のあるもの、脂質代謝障害、腎炎、溶血性貧血、再生不良性貧血、血友病、及び血小板減少性紫斑病、先天性股関節脱臼、内反足、二分脊椎、骨系統疾患、 先天性四肢欠損、分娩麻痺、先天性多発関節拘縮症、児童福祉法第6条の2第1項 に規定する小児慢性特定疾病(同条第2項に規定する小児慢性特定疾病医療支援の対象に相当する状態のものに限る。)及び同法第56条の6第2項に規定する障害児に該当する状態である15歳未満の患者
(ロ) 出生時の体重が1,500g未満であった1歳未満の患者(ニ) 訪問診療を行う医師又は当該医師の指示を受けた看護職員の指導管理に基づき、家族等患者の看護に当たる者が注射又は喀痰吸引、経管栄養等(創傷処置、爪甲除去、穿刺排膿後薬液注入、喀痰吸引、干渉低周波去痰器による喀痰排出、ストーマ処置、皮膚科軟膏処置、膀胱洗浄、後部尿道洗浄(ウルツマン)、留置カテーテル設置、導尿(尿道拡張を要するもの)、介達牽引、矯正固定、変形機械矯正術、消炎鎮痛等処置、腰部又は胸部固定帯固定、低出力レーザー照射、肛門処置、鼻腔栄養)の処置を行っている患者
(ハ) 「超重症児(者)・準超重症児(者)の判定基準」による判定スコアが10以上である患者

次回『在宅医療編(2)』では、中小病院の在宅医療参入強化についてお届けします。


執筆者:荒木 庸輔 Yosuke ARAKI

兵庫県出身。ミラノ工科大学都市計画学科卒業。医療を通してまちづくりに関わりたいという思いから2008年12月メディヴァに参画。支援先の在宅医療部門における運営支援を経て、有床診療所(機能強化型在宅療養支援診療所)の事務長を5年間務める。現在は、全国の医療機関に対する運営支援のほか、中小病院の在宅医療参入支援、自治体の地域包括ケアシステム構築(在宅医療介護推進事業)におけるコンサルティングを担当。一人でも多くの人が在宅療養という選択肢が持てる地域社会の実現をめざす。