ヘルスケアの「明日」を語る

上海が抱える高齢化事情

2015.06.12

いよいよ梅雨に突入しましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

私は先日、上海、青島に行ってきました。日本式の健診と高齢者住宅を開設したいという青島の公司幹部との打ち合わせが、主たる目的です。

上海を初めて訪れたのは90年代前半。天安門事件の後、まだ混迷している時代で、冬だったこともあり、街はまだ茶色っぽい印象でした。道行く女性も化粧っ気は殆どなく、自転車が大量に走り、路地裏には鶏が飼われ、青島ビールはありましたが、皆、温いまま飲んでいました。

その後、数回上海を訪れましたが、毎回この街の急速な発展ぶりには驚かされます。この20年の間に不動産価格は10倍、20倍に上がり、それで巨財を成した人も多く、自転車に代わってドイツ車が大量に走っていました。物価は驚くほど高く、特にブランド物は日本の1.5倍から2倍ぐらいの価格設定です。若い女の子はキレイに化粧し、青島ビールはどこでも冷え冷え。

それでも変わらないこともあり、怪しいビルの奥には偽物ブランドを扱う店や海賊ビデオ屋が。偽物ブランド屋は、店の棚を回転させると裏に小部屋があって、そこにヴィトンやエルメスの偽物がぎっしり。まるで忍者屋敷のよう。

発展を続けていた中国ですが、最大の課題は急速に訪れつつある高齢化社会です。一人っ子政策を続けてきた中国は、一組の夫婦の方に掛かる両方の両親、また場合によってはそのまた両親の介護負担が重く圧し掛かっています。

しかも、日本と違い中国では、「老親と同居して面倒を見る」ことが文化的に是とされています。これでは働く世代が身動きが取れなくなるので、政府は老人ホーム(現地では、「養老」と呼びます)の普及を促し、土地開発の条件として、必ず「養老」を付けることが求められています。

しかしながら「老親と同居」という文化の下では、開設しても果たして埋まるのか?人が死んだ部屋やベッドは縁起が悪いので、次の人が入らない、という問題もあり、「看取り」や「終の住処」という概念も浸透する気配はありません。介護保険制度の整備も遅れているので、入るとすると全額自費になります。

改革開放政策の下、大もうけした人たちにとってお金は問題ではないのかもしれません。しかし、文化的な問題が大きな障壁となっているのか、見学に行ったリゾート型の養老は、半分しか入居していませんでした。

急成長し、エネルギーにあふれる上海でしたが、日本の2025年問題より更に深刻な問題が立ちはだかっていることを強く感じた出張でした。

 

執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)