ヘルスケアの「明日」を語る

米国の高齢者住宅事情(3) 高齢者タウンRossmoor

2014.12.09

急に寒くなり、一気に冬が来ました。周りに風邪をひいている人も増えました。皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私は昔から何故か風邪を引きません。「○○は風邪を引かない」と言われることもあります。満員電車で通わないから(家が近い、バイクで通っている)、しんどくなるとすぐ寝るから、かもしれません。いずれにしても誇れる特技(?)だと思いますが、誰も褒めてくれません。

サンフランシスコ発、高齢者タウンRossmoor

さて今回は、米国出張第三弾として、サンフランシスコの郊外のRossmoorという高齢者タウンの報告を送ります。Rossmoorは、サンフランシスコから1時間ほど北上したWalnut Creekに立地し、約9500人の高齢者が住んでいます。
開発の歴史は1963年にさかのぼり、現在は1800エーカー(約730ヘクタール)の土地に、6800戸が建っています。開発はすでに終了し、当面住民を増やすつもりはなく、新規分譲はストップしています。中古住宅の売買は、Rossmoorの運営会社ではなく、外部の不動産仲介会社によって行なわれています。

住宅は戸建てもありますが、多くは連棟型です。連棟型の古いものは、2500万円から3000万円、新しいものは5000万円から7000万円、戸建ては1億5000万円くらいだそうです。古い連棟型の中古価格が1000万円を切っていた時期もあったのですが、近年、サンフランシスコ界隈はITバブルにより住宅価格が高騰し、Rossmoorの高齢者住宅も値上がりました。運営会社に無料バスに乗って近隣の地下鉄の駅からサンフランシスコの市内に通うこともできるので、セミリタイアの人や、市内で行われるアクティビティに興味を持ち続けている人にも人気が高いそうです。
住宅地の共用部と住宅以外の施設の使用料の整備に充てるために、住民は住宅購入時に一時金7000ドルと年会費700ドルを支払います。

Rossmoorの運営会社が提供する価値は、まずは「安全」のようです。タウンの入り口に24時間警備員がいて、通る車をすべてチェックし、常時タウン内をパトロールしています。(もっとも、730ヘクタールの住宅地の背後は森や山で、そこから不審者が侵入することは可能と思われるのですが、、、。)

次に重視される価値は、良い住宅地としての景観、美観の維持のようです。住宅の劣化を防止し、水が貴重なサンフランシスコにおいてもきちんと家の周りの植栽を美しく保つのは運営会社の責任となっています。

もう一つの大きな価値は、各種付帯施設やレクリエーションの運営です

Rossmoorの運営会社は、共用施設や各種レクリエーション・アクティビティを提供するほか、無料バスの運行、地域の新聞の発行や、ケーブルテレビ局の運営を行っています。

共用施設としては、クラブハウスやレストラン、3つのプール、スパ、8面のテニスコート、フィットネス、18ホール+9ホールの二つのゴルフコース、レストランなどがあります。ゴルフフィーは18ドル(14時以降は8ドル)ですが、それ以外の施設は只で使えます。陶芸、革細工、裁縫、宝飾づくり等々、住民用のクラブ活動は200以上あり、何らかの自分にあったアクティビティを見つけることが出来ます。運営会社は、新たな施設建設やアクティビティの充実に力を入れ、ここ数年の間にも400席の音楽会や演劇が開催できる大ホールや、プロ級の大会が運営できる卓球場を建設しました。

一方、医療や生活支援は、運営会社が提供する価値に含まれていません。タウンへの入居条件は、55歳以上で、自立であることです。生活支援が必要になった場合に備えて300戸程のナースコール付きの「生活支援棟」があり、そちらに引っ越すと月額1500ドルで食事や部屋の掃除などサービスを受けることが出来ます。

ただ、基本的には「生活支援」サービスは、入居者が「自分で選択する」外部サービスが中心です。医療についても、以前はタウン内の診療所ありましたが、外部と連携するほうが良いサービスが効率よく受けられるため、タウンのすぐ外に存在する数多い医療機関を活用することになりました。住民への情報提供としてタウン誌に広告が掲載されるほか、カウンセラーが常駐し、常時相談に乗っています。どのサービスを選ぶのかは、あくまでも住民自身の選択となります。

Rossmoorは、半世紀の試行錯誤を経て現在の形態になりました。当初の開発会社は経営に失敗し、現在の運営会社が引き継ぎました。現在は、開発より運営を重視し、利益も住宅の売買ではなく、運営費の中から出しています。集めた一時金、年会費を新たな施設やアクティビティに投じながら、高齢者が活き活きと暮らすことができる環境を整え、住宅が売却されても次の住民が入ってくる仕掛けを作っています。

たしかに景観、美観は素晴らしく、施設やアクティビティは羨ましいほどの充実ぶりでした。医療や生活支援は、正直なところもう少し充実させてもいいかと個人的には思いましたが、競争のない「中」でのサービスより、競争にさらされた「外」のサービスを活用する方が理に適っている気もします。

日本の場合、一般の住宅地開発でも、開発当初は威勢が良いのですが、何十年も経つと高齢者が増え、付帯設備が衰え、空き家や空き店舗が増え、衰えてしまうケースが多々見られます。高齢者を主たるターゲットにし、半世紀も経った今もなお活き活きとした街として発展しつつあるRossmoorは、日本の事業者にとっても学ぶ点の多い、興味深い事例に思えます。