ヘルスケアの「明日」を語る

経営再生にみる、ホテル業界と医療業界の共通点

2011.05.26

先週の土曜日、沖縄国際大学で星野リゾートの星野佳路社長と一緒に講演をしてきました。今回は、マッキンゼーの先輩でもある慶應義塾大学SFCの高橋俊介教授のお声掛けで、沖縄で「人材育成プロフェッショナル養成講座」を立ち上げるためのシンポジウムでした。

高橋先生から、今回のシンポジウムと講座の趣旨説明がありました。

沖縄県はサービス業主体の産業構造で、観光、IT、医療介護、小売り、健康、芸術など日本が抱える「少子高齢」や「アジアとの交流」などの課題に対応する有望な産業に適しています。

しかしながら、実際は若者の早期離職率と失業率の高さなど、雇用の質と量に深刻な問題に悩んでいます。このような問題は、沖縄特有のものではなく、日本全体のサービス業に共通する課題ともいえます。戦後の高度成長期から日本が蓄積してきた経営ノウハウ、組織人材マネジメントノウハウの多くは輸出型製造業中心のものであり、日本のサービス業は欧米諸国のそれに比べ全く生産性が低く、人材が長期的に育ち、安心して勤めることのできる場は少ないのが現状です。

今回の養成講座は、サービス産業における企業・組織の人材育成への取り組み強化など、マネジメントの質の改革による生産性向上と人材の成長の実現を目指して、あえて沖縄で立ち上げたそうです。

基調講演では、星野さんも私もサービスマネジメントについてそれぞれ1時間くらい語りました。私は「医療機関におけるサービスマネジメント」ということで、病院の再生の例を取りながら、医療界というかなり毛色の異なる業界でも、一般産業でのサービスマネジメント的な手法は有効であることと、実際の運用のポイントをお話ししました。

星野さんもホテルの再生の例を取りながら、同じテーマについて語られたのですが、驚いたことに「ホテル業界における再生」は、「医療界における再生」と視点、ポイントが酷似してました。

以下に星野さんから伺った内容より(カッコ内は私の感想です)。

・観光業界は20兆円産業(医療介護業界の半分ですね!)。日本は全世界で33位、アジアでは10位(意外と低い!)。近年、海外からの旅行客が増えているが、大した施策は打てておらず、単に世界中で旅行する人、特にアジアの旅行客が増えているだけ。日本はむしろ順位を落としている(やはり、、、。)

・サービス商品の特性は、「困難な事前評価」、「不均質性」、「顧客のプロセス参加」、「無形性」の4つ。

・サービスは、現場がその場で判断して提供する財であるという特性があるので、現場が戦略を理解し、自分でその場、その場に応じて正しい判断をすることが大事である。このために現場を正しく「エンパワーメント」する。

・ホテルの再生に入った時、現場の「エンパワーメント」の方法は5つ(これが医療機関の再生の場合もほぼ同じ!)。①将来像を共有すること、②コンセプトへの共感を持ってもらうこと、③フラットでアイディアが出しやすい組織作り④「醍醐味」満喫、すなわち顧客に褒められる楽しみを感じてもらう、⑤キャリア選択の自由を持ってもらうこと。

以上のお話を伺い、特に興味深かったのは、「コンセプトへの共感」を確保するためには、必ず委員会を作り、自分たちでコンセプトを決めてもらうということです。

観光業はお互いフレンドリーなので、競合にもどんどん行って、話を聞きます。また、どんなにうまくいってない旅館でも来ているお客様はいるので、「何故あえてこの旅館を選んだのか?この旅に何を期待しているのか?」を聞くそうです。今いらしていただいているお客様がターゲット層で、そこから徐々に広げていく。そのためには、ターゲット層の持っている期待やニーズを徹底的に深堀するとのこと。

また、「将来像を共有する」ためには、将来の到達点だけではなく、今何合目まで来ているか、だとか個々の投資判断等を全部開示し、経営の考え方を浸透させるそうです。

沖縄へ行くこと自体非常に楽しかったですが、それにも増して勉強になった一日でした。

執筆者:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)