ヘルスケアの「明日」を語る

「地域見守り支援システム実証事業」について

2009.06.03

梅雨にそろそろ入ったかな、という不安定なお天気が続きますが、皆様はいかがおすごしでしょうか。

しばらく前に経済産業省のサービス産業課から連絡があり、「地域見守り支援システム実証事業」の推進委員会委員をやってくれないかとのこと。

本委員会における「地域見守り事業」とは、IT ツールを活用し、在宅療養者等(高齢者や慢性疾患患者等)等に対して、遠隔から効率的に質の高い医療・介護等のサービスを提供する事業、として定義されています。「地域見守り事業」に必要なシステムを構築する「モデル実証事業」を行なうので、年に数回集まって意見を述べて欲しい、とのことでした。
私以外の委員は、東京大学の山本隆一先生、慶応義塾大学の田中滋先生、九州大学の中島直樹先生、東北大学根東義明先生等、なかなか面白いメンバーが揃っています。オブザーバーとして経済産業省だけでなく、厚生労働省からも出席しています。

第一回委員会は今週月曜日の午前中に開催され、討議を受けて「モデル実証事業」の公募が開始されました。
採択されると約7000万円の助成金が出ます。
http://www.nss-med.co.jp/mimamori/index.html

在宅療養者等(高齢者や慢性疾患患者等)等に対して、遠隔から効率的に質の高い医療・介護等のサービスを提供することは非常に意義があることなので、是非進めてほしいのですが、委員会での説明を聞いていて気になったのは、「技術の問題じゃないんだよね」ということでした。

技術的には遠隔医療はかなり良い線まで来ていると思います。特に在宅療養者を対象にする場合、医師のサポートの大部分は経過を診ること、相談にのること、看護師や介護士、家族に指示、アドバイスを出すことなので、多くの部分は遠隔で対応できます。ただ、今後遠隔医療が立ち上がり、普及するには経済性の問題とリスクの問題をクリアしなくてはいけないと思います。経済性というのは、診療報酬の問題と密接に関連していて、現在例えばテレビ電話を使って診療をしても、保険点数の対象にはなりません(微々たる金額が電話再診料として取れますが、、)。本来であったら、テレビ電話を使い、日に5~10件しか回れないところを、倍以上の効率で回ることができるようになるはずなので、トータルのコストを下げることも可能なはずが、これではインセンティブは働きません。
また、もしも万が一何か問題があった場合、現行では全てが遠隔医療を実施した医師、看護師の責任になり、リスクを回避する方法がありません。医療界全体が「医療崩壊」を唱え、医師が刑事訴追や訴訟を恐れて仕事をするなか、リスクを分散する方法がなければ、あえて踏み出そうと思う医療者は非常に少なくなると思います。

今回の実証事業では、IT等の技術面だけではなく、経済性確保やリスク分散の面にも焦点を当てた議論ができるようになることが望ましいと思っています。医療費を効率的に使うためには、個々の行為の単価を下げるのではなく、仕組全体のコストを下げることが最善で、遠隔医療をそれを担う重要な要素だと感じています。

執筆者:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)